ナルジの教訓
太平洋に浮かぶ小さな島国ナウルがある。ルワンダ、ジンバブエという国がアフリカにある。この3つの国は、極端ともいうべき教訓を教えてくれる。
ここに「ナルジの教訓」と題して整理してみた。
まず、ナウル共和国から始める。ナウル共和国は、太平洋南西部にある日本から4800Km離れた島国だ。このナウルが20年ほど前、アメリカや日本をおさえて世界で一番のお金持ちの国だったのだから驚きだ。なんと医療費、学費、税金などがすべてタダ、という夢のような国だったのだ。
ところが今は、見る影もなく、哀れで、貧しい国となっていると聞き、これがまた驚きだ。
ナウルでは、現在、成人の90%が無職、糖尿病予備軍の人口比率は世界一となっている。
ナウルは、サンゴ礁の上にアホウドリの糞が堆積してできた島らしい。偶然の取り合わせが、良質のリン鉱石を生み出したのだ。約40年前リン鉱石の輸出が始まり、世界のお金が集まるようになった。
1981年、ナウル国民一人あたりの収入は、アメリカや日本より上になったとのこと。国民は、すべてが無料、さらに労働抜きに国から支給される資金で、外国滞在生活を数か月に渡って家族で楽しみ、高級車に乗り、グルメに酔いしれ、遊び癖を大きくしたのだ。
ところが、その資源も無限ではない。1990年代から枯渇し始めると、収入は激減、貧しい国へと一気に落ち始めたのだ。2000年には国家破産状態となった。
「今楽しければ未来のことなど考える必要がない」、この考え方が国を滅ぼした典型例と言える。
ナウルが今必死に取り組んでいるのが、子供たちへの教育だ。遊び癖のついた親世代は糖尿病で何をすることもできないが、子供たちは貧しさの中で、自立を目指して猛勉強を開始したと聞く。
真の繁栄とは何かについて考えさせられる教訓がここにはある。
次にアフリカのルワンダについて考える。
NHKスペシャル・アフリカンドリーム「悲劇の国が奇跡を起こす」が放映されたことがある。
その解説の要点を紹介する。
1994年、民族間の対立で80万人が殺されるという大虐殺が起きてから16年、ルワンダは驚異的な復興を遂げ「アフリカの奇跡」と呼ばれるようになった。その原動力は「ディアスポラ(離散者)」と言われる人たちだ。半世紀前の独立前後から迫害を逃れて世界各地に散らばったルワンダ人は、およそ200万人にのぼるが、今「祖国を復興させたい」とルワンダに巨額の投資を行うとともに、次々と帰還を始めているのだ。半数の100万人がルワンダに戻り、驚くべき復興を遂げている。
ディアスポラとして世界へ散って行ったルワンダの国民は、誰にも頼らず、一人で生き抜く精神力を身に付けたのだ。技術を必死に学び、人脈を築き、あるゆる意味で人間力を高めたのだ。井の中の蛙のような狭い視野から世界的な視野に、否が応でも飛躍せざるを得なかったのだ。その飛躍した人間力が世界から帰還して奇跡を起こしているのだ。アメリカンドリームではなく、アフリカンドリームという言葉を生み出したのだ。
ユダヤ人のディアスポラはあまりにも有名だ。1900年にも及ぶ流浪の運命とヒトラーの600万人にも及ぶ大虐殺は信じられない悲劇だったが、その悲劇の歴史がユダヤ人の優秀な頭脳と団結力と経済力を生み出したとも言える。
「自分の力で生き抜くしかない」という厳しさの中で、自立心と責任感が磨かれたのだ。「頼りになるのは自分の実力以外にない」という自覚が強ければ、誰よりも研究し、努力し、自己を限界まで高めようとせざるを得ない。
いつ追われるかもしれない運命では、土地や建物に価値を置くことはできない。ところが、実力と経験と資格ならどこにでも持って行けるのだ。
移動が容易で、隠しやすく、価値の高いものとして、ダイヤモンドなど、高価な宝石にウエイトが置かれるようになったこともうなずける。ディアスポラの運命をそのような価値に運命を預けたのだ。そのような歴史がアメリカで結実した。
今では、アメリカの巨大資本の大半はユダヤ系が握っていると言われている。
ルワンダのディアスポラは、ユダヤ人に比較すればごく最近のことだが、それでも、見違えるほどの発展が現実となっている。国家の繁栄、歴史の繁栄は、結局、国民の信頼度と能力度を根拠としている。国民の実力を高めずして繁栄はありえないし、あったとしても砂上の楼閣だ。一時的な繁栄に決して甘んじることなく、絶えず努力を継続することが肝要だ。人間を磨くことなしに、国家が繁栄することはできないのだ。
もう一つの極端な反面教師、ジンバブエについて触れる。
まず、「ウィキペディア」から要点を紹介する。
世界で最もインフレが激しく、2008年5月に1億と2億5000万の額面のジンバブエ・ドル札が発行された後も、50億、250億、500億ドル札の発行と続き、7月には1000億ドル札の発行が行われた(これは発行時の時点で世界最高額面の紙幣)。そのため、コンピュータの処理にトラブルが発生していることから、中央銀行はデノミを実施し、大幅な通貨単位の引き下げを実施することを決定した。1000億ドルが10ドルとなり、それに対応した新紙幣が発行された。しかし、さらにインフレが続いたため、12月末には100億ドル新紙幣を、2009年1月には再び200億ドル紙幣と500億ドル紙幣の発行を行った。この時点でジンバブエ・ドルの価値は、250億(25000000000)ジンバブエ・ドル=1米ドルとなった。年間インフレ率は約2億3000万%に達している。(2009年1月現在)
ジンバブエは、かつては農業、鉱業、工業のバランスの取れた経済であった。特に、白人大規模農家による非常に効率的な農業が行われていた。外貨収入の半数を農産物の輸出で得ている農業国で、かつてはヨーロッパから「アフリカの穀物庫」と呼ばれていたほどであった。
しかし、これを支えていたのは、低賃金で過酷な労働使役についていた黒人たちである。その恩恵を本来の国民である彼らが受けることはなく、いくら対外的に経済のバランスが取れていようと、彼らは全く無縁にただ貧困に喘ぎ続ける状況だった。国土の90%以上を所有していた白人農場主には、欧米の本国に住みながらの不在地主も多かった。しかし白人農家に対する強制土地収用政策の開始後、ノウハウを持つ白人農家の消滅、大規模商業農業システムの崩壊により、農作物の収量は激減。基幹産業の農業の崩壊によって生じた外貨不足は、さらに部品を輸入で調達していた工業にも打撃を与え、経済は極度に悪化した。経済成長率は-12.1%(2002年)を記録し、経済システムは崩壊した。
ちなみに、農場主と地元民との交渉による自主的な返還も多く、すべての土地が強制的に収用されたわけではない。
さらに旱魃(かんばつ)により食糧不足が深刻化し、飢饉となっている。10人に7人が飢餓に苦しんでいると言われており、国民は飢餓の余りにトウモロコシの粒や昆虫を食べて飢えをしのいでいるそうだ。加えて欧米各国による経済制裁が影響し、2003年末には600%のインフレが発生。2006年4月には1,000%以上に達した。2008年7月16日ジンバブエの中央銀行総裁は年間インフレ率が220万%に達したという発表をしている。
しかし、実態のインフレ率はさらに高いと推測され、例えば1日に3回食料価格が値上がりしている。すでに国民は通貨の額面ではなく、重量で取引をするありさまだという。同年に発行された500億ジンバブエ・ドルは闇レートですら200円程度の価値しかなかったという。これは事実上ジンバブエ共和国の経済が崩壊していることを意味している。いずれにせよ第二次世界大戦後、ワーストのインフレ率を更新して行った。
最近は、中華人民共和国との経済関係を強化しているが、2007年8月23日ジンバブエ政府が国内の外資系企業に対して株式の過半数を「ジンバブエの黒人」に譲渡するよう義務付ける法案を国会に提出、9月26日に通過した。これにより経済の崩壊が決定的になると見られる。
2009年1月29日、ジンバブエ政府は完全に信用を失ったジンバブエ・ドルに代えてアメリカ合衆国ドルと南アフリカランドの国内流通を公式に認め、公務員の給与も米ドルで支払うようになり、米ドルの影響下に入った。これにより同国のインフレは劇的な終息を見せ、ジンバブエ政府によれば同年3月の物価は同1月比0.8%減となった。しかしこれは、インフレが終息したというよりも、ジンバブエ・ドルを使用する人がなく、完全に価値を失ったと見るべきである。経済はすでに破綻しており、失業率が国連の推測で94%に達するなど 、再建のめどは立っていない。
引用:「ジンバブエ」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』。
2010年6月19日 (土) 10:50 UTC、URL: http://ja.wikipedia.org
白人が主導権を取っている間は、アフリカの穀物庫とまで呼ばれるほどに上手く行っていたのがジンバブエであった事実を見れば、技術があれば、海外との交流が上手く行けば、生産的な国であることは間違いない。しかし、白人の豊かさには貢献しても、ジンバブエ国民にとっては苦しいだけの状況では、理想的とは言えない。当然、白人を追い出して自分たちのものとすれば、その繁栄は自分たちのものになると考えやすいのは納得できる。
事実、白人を追放して自分たちで権力を取ったのだ。
ところが、前よりもはるかにひどい状況に陥り現在まで驚くような混乱が続いている。
白人に管理されることが面白くないからと言って、国土を取り返せば上手く行くわけではない。白人の管理システムやノウハウを学び取るなり、盗み取るなり、とにかく白人以上に経営できる実力を養うことが本質であることを忘れ、土地と権力を奪い取ることだけにうつつを抜かしたのだ。
●ナウルは、労せずして得た財産に酔いしれ、人間を磨くことを忘れて悲惨な国となった。
●ルワンダは、世界へ難民となって避難する悲劇の時代を通過し、それを契機に、人間を磨かざるを得ない状況に追い込まれ、今では奇跡の復興を成し遂げつつある。
●ジンバブエは、人間を磨くことをせずに、ただ、国土を奪い返せば上手く行くと錯覚してとんでもない状況に陥った。
この三者の共通要素として、「人間の実力を高めること」が如何に重要であるかが分かる。
人間の実力とは国民一人一人の信頼度と能力度であり、それを高めるには教育以外にない。国家の本当の財産とは、国民の信頼度と能力度の高さなのだ。
その点を見誤ればとんでもない結果に終わってしまうのだ。
日本は、戦後無条件降伏の惨めな状況から復興した。日本人は、技術力を高めようと、馬車馬のように働いた。果敢に世界の果てまで出かけ、夜遅くまで働き、学べることはどんなことにも関心を持った。国民一人一人の実力を高めることによって、国力を高めたのだ。
どんなに順調にいっていても、成長期にある子供たちの人間としての実力を高める努力は決して力を抜いてはいけない。それを忘れた途端に国家は滅びの道を進み始める。
悲劇を契機として、自立心や責任感を養うようでは賢いとは言えない。
資源などの有限なものに、豊かさの根拠を求めることも賢いとは言えない。
人の繁栄を妬み、奪い取るだけで、豊かになることなどできない。
それが教訓だ。
日本は教育大国とならなければならない。親にとって子供こそが、最大の宝であり、子供を立派にすることが最大の使命であり、最優先事項であることを一瞬も忘れてはいけないのだ。
鮭の生涯が教えてくれる教訓に負けてはいけない。鮭は立派な子孫を残すことだけを目指して生涯走り続ける。子孫を残そうと産卵を終えて死んでゆくのだ。
人間はその原点に返るべきなのだ。ナルジの教訓はそのことを教えてくれる。
真の実力、真の繁栄、真の伝統について考えるべきだ。
共鳴される方は、WHIにアプローチして欲しい。
