■効率のよい非効率 (2003年10月19日号)


日本では、携帯電話の普及率が既に60%を超えているそうです。駅や街角で携帯電話に向かって一生懸命話す人の姿は、以前は奇異に感じることもありましたが今では慣れてしまいました。携帯電話の普及に反比例して、お菓子の売上が下がったと言う話があります。多くの若者が携帯電話にお金を多く使うようになったからと分析されているようです。それほどまでに人々はコミュニケーションへの関心が強いことが解ります。私たちは、携帯電話というハイテク機器が導入されるようになり、遠くの人とも気軽に会話できるようになりました。

しかし、そのような中でも人と人とが理解し合うためには、一つずつ説明し確認し合うという点で何も変わっていません。機器の効率は飛躍的に上がりましたが、人間のコミュニケーションの効率は相変わらずで、手間がかかります。話すというプロセスを楽しむ人にはそれは何の問題もありませんが、効率を重視する人はその「非効率」にとても苛立ちを覚えます。もっと短時間で意図を読み取ってもらえないのか、さらにそういう悟りのいい人とだけ付き合えないものかとさえ考えます。ビジネスの場合は、それもある程度可能かもしれません。しかし、それが家族となるとそこから簡単に逃げ出すわけにはいきません。コミュニケーションツールの効率は改善されていくのに、どうして人間同士のその効率はあいも変わらず手間がかかるのでしょうか。

さて、何か疑問を解決しようとする時、WHIの基本理念である 『 ホワイハウメッソド ( WHOM : Why HOw Method ) 』 で分析しているように私たちはWHY(目的)とHOW(手段)という観点でそれを分析します。今回のテーマである、人間同士のコミュニケーションには手間がかかるという点にも、WHYの原因とHOWの原因とがあるはずです。

HOWの原因を分析して、もし説明の手順が悪いのであればそれを改善する必要があるし、話だけでは解りにくい場合、絵やグラフを用いればもっと言葉少なく解りやすくすることができます。HOWに原因がある場合にはこのようにして、手間のかかり方を軽減していくことができます。

しかし、もう一つWHYの原因もあるということに着目する必要があります。つまり、もともと人間がコミュニケーションを取るのになぜ手間がかかるのか、そのように手間がかかる目的は何かという分析です。人間が関わる現象の分析をしようとした時、いつも「そもそも人間とは何か」に戻る必要があります。たかがコミュニケーションに手間がかかる、かからないということぐらいで、どうしてそんなテーマに取り組まなくてはならないのかと思うかもしれません。しかし、ホワイハウメッソドの一つの結論から多くの小さなことに対する説明がつくことをぜひ参考にしていただきたいのです。

話を元に戻しましょう。人間は、一生を通して自分を完成させていこうとします。先ず、自分の何たるかを知り、人と調和し、他から評価を受けていかなくてはなりません。何の強制からでもなく自分の自由な意志に基づいてそれができることによって、完成できるようになっています。これを三大責任の法則といいます。

今回のコミュニケーションに手間がかかるということも、このことと無関係ではありません。人間は生まれた時には、全く自己中心的です。生まれた時から、親に気を使う赤ちゃんはいません。しかし、そのまま大人になっては完成への道はなく、他人を受け入れ、信頼と愛情を得ていくことが最大のテーマです。そのためには、そのトレーニングが必要です。何も苦労なくそれが身につくことはないでしょう。

私たちの体も、筋力をつけようとすればその筋肉にストレスを加えます。しかも継続的にします。その結果、それに耐える筋力を得ることができます。同じように、人間の心の最大のポイントである信頼と愛情も、それを育てようとすればそれなりのトレーニングが必要なのではないでしょうか。その一つが、人と人との手間のかかるコミュニケーションだと思うのです。

相手を理解しようとすれば、単に話の内容だけでなく相手の立場に立てないと理解できません。簡単に内容を理解したいと思っても、相手には事情がある場合もあります。自分の事情だけを優先してコミュニケーションは取れるものではありません。しかも、コミュニケーションは継続的に色々な人との間において取っていかなくてはなりません。それが信頼と愛情という心の筋肉を鍛えるいい材料だと思うのです。

手間のかかるコミュニケーションの原因がHOWにある場合には、積極的に対策していく必要がありますが、そもそも手間のかかることにも目的があり、そのWHYの原因をも理解できるなら、私たちは、それに喜んで立ち向かう意欲が湧き出てくるのではないでしょうか。

メールマガジン編集部



 Copyright(c) 2001 WHY-HOW Institute. All rights reserved.