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■心の汗


もきちのきもち  〜ある中学校の保健室にて〜

bP6 心の汗

 2学期になり、校舎内に歌声が響き始めた。文化祭の合唱コンクールのためにクラスごとに取り組んでいるのだ。保健室には、行事のたびに弱った心を持て余す子ども達が訪れる。その顔ぶれはいつも変化していくが、また来る。
 ピアノ伴奏者は、楽曲がうまく仕上がらないとうなだれる。クラスのみんなに迷惑をかけると。誰かが、いやな眼で自分を見ると感じるし。
 パートリーダーはメンバーが協力してくれず泣く。いつまでもふざけているし、歌を覚えていないために隣のパートにつられていくなんて信じられないと。
 指揮者は嘆く。男子と女子の仲が悪くハーモニーどころじゃない。喧嘩をしている。時間がない。焦る思いで夜も眠れないと。
 日頃来るはずのない人が「気持ち悪いんです。」とブッチョウズラでやってくれば、だいたいこんなことである。「珍しいね、保健室に来るなんて。歌の練習はどう?みんなの心のハーモニーはいかが?」と軽く尋ねれば。こぼれる、こぼれる、苦しみの言葉。
 こんな時、私は聞く。その悩みはどうすれば解決するの?原因はなに?ピアノの練習を続けてマスターすること。つられそうな人は、並ぶ位置を工夫する。特別レッスンもやってみる。歌の前には仲直り。先生に早速相談してみようよ。私は早期解決の近道を一緒に考え、心を整理し、実行する勇気を注入しよう。そして、あなたは笑顔で教室に戻ろうじゃないか。

 それぞれの教室の壁には模造紙に書かれた歌詞が貼られ、給食の時間にCDプレイヤーからその曲が流れる。「昼休みも練習しようぜ!」やんちゃな君の声が響く。朝練をするクラスもあるのだから、みんな真剣だ。

 さわやかな陽射しの中で、文化の流れを感じる時、秋だなと一人思う。去年は、演劇部の部員がプレッシャーと苦悩で毎日のように頭痛を訴えてやって来たっけ。過去の秋のことまで蘇る。この時期は毎年同じような主訴を耳にし、目の前のハードルを越えかねている子ども達の背中をなでている。
 青春の1ページにあふれる涙。涙は心の汗だ。

(もきち)





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