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■恩返し


もきちのきもち  〜ある中学校の保健室にて〜

bP5 恩返し

 中国からの転校生。彼らはボランテイアの方に日本語を教わる。やさしい表情が安心感を与えるその方とはご挨拶をする位の面識だった。ある日私は声をかけた。「たまには保健室にどうぞ。」快諾してくださり、一緒に歩いた。
 「今日はうれしいことがあったんです。」その方の笑顔が輝いた。最近中国から来たばかりの姉弟に、卒業生のご家庭からリサイクルの制服やカバンが届いたという。力を貸してくれたのは、昨年中国からきた男の子のご家庭だった。
 その子が初めてやってきた時、依頼を受けた1年先輩が保健室を中国語で説明してくれた。それを聞きながら、赤いほっぺでニコニコしていた。その子が今年は姉弟にお伴し、してもらったように説明をしている。この3代の転校生は、みんなその方に日本語を学んでいた。
 2代目の赤いほっぺの子の話。2年生でテニス部に入ったが、顧問の先生が1年生と同じメニューの練習を指示したことが気に入らない。ゼロからのスタートが納得できない。「僕は2年生なのに。」そしてまた、小学生の漢字ドリルを見せると、ポイっと投げてしまう生意気さ。「僕は中学生なんだ。」目標をあっという間に実現したがるが、そうはいかぬ。プライドが邪魔をする。
 そんな態度にもかかわらず親身になり語りかけ、わかるようにできるようにする忍耐。それは並大抵のものではないだろう。その方の根気強い援助のおかげで、日本語もテニスも勉強もみるみるうちに上達していった。本人に努力する気持ちが芽生えたのだ。今や堂々たるものである。
 昨年、外国人のための弁論大会に参加した。その方が勧めたという。反抗期のせいか、思い通りにならず腐りかけていたからだ。ゼロからのスタートの苦悩、積み重ねのプロセス、ゼロから順番にやらなければならなかった意味が後になってわかったことを語り、拍手喝采!大人たちを押しやってみごと優秀賞に選ばれた。
 ひとこと話す度に観客席で「よし!」とこぶしを握っていたその方。その度に彼はその方に確認の視線を送ってきた。感謝の気持ちは、どの言葉でも語り尽くせないだろう。
 いま彼は、新しく母国からやってきた後輩のために恩返しをしている。       

(もきち)



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