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■静かな朝


もきちのきもち  〜ある中学校の保健室にて〜

bS 静かな朝

インフルエンザが流行し、授業の始まりが一時間遅れになった1月のある日。
登校時間よりずいぶん早いのに、保健室の窓の外で人の気配を感じました。
木陰のむこう、テニスコートのベンチに女の子がひとり座っています。

教室に入れず困っているのかと思い、「どうしたの?」と駆け寄って驚き。
その横顔から涙がぽろぽろとこぼれていました。
その子は3年生。引退したテニス部のことを思い出していたと、小さな声で
言うのがやっとの様子です。練習を重ねた懐かしい場所を眺めていたら、
胸がいっぱいになったのでしょうか。

「親切という名のおせっかい そっとしておくおもいやり」
この言葉を脳裏によぎらせながら、私は保健室へと戻りました。

それ以来、顔を合わせることもなく歳月は流れ、涙の意味を聞くことは
ありませんでした。多くを語らなかったためか、ひとりでに私の想像は
ふくらみました。充実感と同じくらい、人知れぬ苦しみや悲しみがあった
のではないかと。

ぽっかりとできたあの時間。その時こみ上げてきた熱い想い。
それは冬の印象的な風景として、私の心の中に残ったままになりました。

ひとつのことを終えた時どんな気持ちになるのかは、その時にならないと
わかりませんね。「悔い」というものができるだけないことを祈りつつ、
今できることに想いをそそごう。

(もきち)







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