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■親知らず


もきちのきもち  〜ある中学校の保健室にて〜

bP 親知らず

授業中なのに、誰かがドアを少し開けてのぞいている。
2年生の渚ちゃん。時々、友達とうまくいかずに泣いてくる。
今日は親知らずを抜いて歯医者から直行。だから遅刻なのだ。
左の頬を手で押さえ、沈んだ表情で長いすに腰を降ろした。

「親知らずって親不孝するとできるんでしょ?」
真面目な顔で言っている。「えっ、・・・そうかもね。」
それから先を聞きたいじゃないか。「誰が言ったの?」
「自分でそう考えたの。手術している間、ずっと手を握りしめて、
お母さんにごめんなさいって言ってたよ。」

たくさん心配をかけて、言うことをぜんぜん聞かなかったのだろう。
ずいぶん叱られてきたのではないかと想像した。
微笑ましくなり、親知らずと呼ぶ意味を説明する気にならなかった。
そう思っているのならそれでいいではないか。

家で「親知らずって」と話したら、「何言ってるの」と一蹴されたらしい。
翌日、もっと頬を腫らして、さみしそうに話してくれた。
私は思う。お母さん、笑って抱きしめてあげてほしかった。
そこを人に見られたくないために、自分でガーゼを貼ってきた。
そのテープがはがれてしまうので、やり直してほしいという。

「もうすぐよくなるよ」と言いながら、新しいテープを貼ると
「抜糸まで頑張るよ!」と笑顔で教室に戻って行った。
「親知らずって親不孝するとできるのかもしれない」と思えてきた。
親知らずのおかげで、自分の行動を反省した渚ちゃん。
そう思ってこれからどうするのか。それが大事なんだね。

こどもの新説に、感心、感動。
                           (もきち)





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