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本気の言葉 (2004/5/30)


HEART LAND 2004    bU 

    本気の言葉

 月に一度、実家のそばのお気に入りの美容院に行くことにしている。今日は、両親の43回目の結婚記念日。ちょうどいいので、そのようにスケジュールを立て、ひとり実家に向かった。
 実家は、同い年の両親が60歳の定年退職と同時に住み替えて移り住んだ場所。もう今年で9年になる。だから、私にしてみればその土地に深い思い入れはない。未だに地理があやしい。いつも父の運転する車に駅までお迎えを頼む有様だ。家に着くと、母が元気に私を出迎えてくれた。先月から1ケ月ぶりの実家。両親の様子と生活ぶりを目にして、ほっとしたり心配したり。

 ある朝、目が覚めると主人がいきなり私に言った。「やっちゃんは、親と一緒に住みたいでしょ?」寝ぼけ眼のまま、質問の重さを認識する。「一緒に住みたいって言うか・・・今まで、いろいろお世話になったから恩返しをしたいだけなの。後になってこうすればよかったって思いたくないの。」とスラスラと答えた。自分の心にあった言葉に我ながら、「そう思っているのか。」と感心した。
 「僕がそうだった。親孝行したいと思った時には親はいなかった。」そう言いながら、主人はリビングに行ってしまった。残された私は、ほんの少しにじんだ涙を枕で拭いた。なんて、シリアスな朝なんだ。

 両親の結婚記念日には、重大な申し込みをすることになっていた。「我が家が持つ家と両親が持つ家をそれぞれ売却し、新しい土地で隣同士に住もう!」という壮大な内容だった。それには、ものすごい決意とエネルギーが必要なのをわかっているつもりである。「それを説得できないようでは、本物の愛情ではない。」と主人にはっぱをかけられ、今日は実家に足を運んでいた。
 話の切り出しに、私はあの日の朝のことを両親に話した。話しながら、感極まり涙があふれてしまった。つられて母も泣いている。父は固まっていた。それでそれで・・・。本気の言葉は、今まで動かなかった人の心を動かした。
 両親との貴重な時間を、主人と笑顔で送りたい。

(ひらめきのペガサス)   





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