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■スターバックス


10月10日、大阪証券取引所のナスダック・ジャパン(NJ)に上場したスターバックスコーヒージャパン(以下スターバックス)は、そのコーヒーがもつ独特の芳香と深い味わいだけで継続的成功を収めてきたのではない。やはり、伝統的な「人」の要素がかなり強い。

ナスダック・ジャパン:
多くの新興企業に成長の機会を与え、投資者に魅力的な投資対象を提供して世界最大規模に発展した米国ナスダック市場であるが、その上場制度や売買制度を最大限に活かした市場として日本に創設。これにより、日本においても21世紀を担う活力ある高度成長企業に上場による資金調達の途を開き、また、投資者に多様な投資対象を提供。ナスダック・ジャパン市場は、将来においてアジア、米国及びヨーロッパの三極市場をオンラインネットワークでリンクし、24時間取引を見据えたワールドワイドな市場の構築を目指している。


まず、スターバックスの日本におけるビジネス展開の概略をまとめる。設立年月日は1995年10月で、翌1996年には銀座に第1号店をオープンした。またつい先日の10月12日には日本における第300号店が新大阪ニッセイビルにオープンしている。つまり6年で300店舗に拡大したわけである。さらに、2004年3月末には日本市場での店舗数を500店舗にすることを目指している。なお、スターバックスの店舗は、全店直営で運営しており、現時点では、フランチャイズによる運営を行う予定はない。

直近本決算である2001年3月における、決算情報は次の通りである。

売上高 29,134 百万円
営業利益 1,570 百万円
経常利益 1,475 百万円
当期利益 1,439 百万円
資本金 3,001 百万円
発行済株式総数 1,200 千株
総資産 18,395 百万円
株主資本 5,654 百万円
株主資本比率 30 %
有利子負債 7,527 百万円

そして、冒頭の10月10日の株式上場では、初値が8万円となり、終値に基づく時価総額は994億円となった。この上場による調達資金約130億円で、新規出店を加速する。

ちなみに国内コーヒーチェーン最大手のドトールコーヒーは、9月末現在国内店舗数は803店舗で、直営店が106、フランチャイズ店が697である。直近本決算である2001年3月における、収益については次の通りである。

売上高 42,492 百万円
営業利益 4,146 百万円
経常利益 4,196 百万円
当期利益 2,161 百万円

ドトールコーヒーは全店舗でわずか13%が直営店であるのに対して、スターバックスは全店舗が直営店である。このことは何を意味するのか?

2000年10月に開催された第2回日経フォーラム「世界経営者会議」(主催=日本経済新聞社、スイス経営開発国際研究所、米スタンフォード大学アジア太平洋研究センター)で講師として招待された、米国スターバックスコーヒー会長のハワード・シュルツ氏は次のように語っている。

私がスターバックスに出会った19年前は4店舗だったが、今や3600店舗。これほど世界で認めてもらえるとは思わなかった。

当社が成長を通じて得た教訓が二つある。一つは技術やマーケィングだけでなく、人的資源が重要ということ。もう一つは、消費者が企業に不信感を抱いている現代にあって、思いやりや親愛を組織の中に作り出すという微妙なバランスこそが、ブランド普及に結び付いたということだ。

私はニューヨークの貧困家庭で、豊かさを夢見ながら育った。そして、人間の精神が豊かであることの大切さに気付いた。

ブランド普及のために広告する資金もないので発想を逆転、社内でブランドを確立してそれを顧客に広げることにした。従業員との信頼作りのため、パートタイマーを含む全従業員にストックオプションを与えて会社への帰属意識を植え付けた。当社の離職率は米企業の平均よりずっと低い。

米国のサービス業は顧客を大切にせず消費者の信頼度は低い。当社は自宅と会社の間で安らげる「第三の場所」を提供することでブランドを築いてきた。

他国への展開もブランド力を確認しながら進めた。言葉や文化が異なる国で受け入れられたのは、当社の価値観に米国のみならず世界中の国の人々が共感したからだ。今後もブランドの価値を維持していきたい。


スターバックスに限らず、顧客との信頼関係、さらには会社内における組織文化・伝統を大切にし、常に努力を払っている会社には成功事例が多い。この点はWHIホームページですでに幾度か取り上げている様に、「時代の進展と共に人々はより本質的な満足度を求めており、その本質的な満足度を提供しようと努力するビジネスは支持される」ということになろう。

さて今後、スターバックスとドトールコーヒーのどちらが日本市場においてさらに継続的発展を続けるであろうか? ちなみに、このような質問はMBA(経営学修士)コースにおいて学生によく投げかけられる。もちろん将来のことに対する質問であるため、答えは1つに限る必要はない。

現在の両社の基本方針が変らなければ、おそらくそれぞれ異なる市場セグメント(階層)で発展するように思える。スターバックスは独自の高品質を提供しているが、高価格である。またその背景にある企業としての文化・伝統を伝えるための直営経営はうなずける。一方、ドトールコーヒーは、十分な品質のコーヒーとそれに付随したホットドッグ類を低価格で提供している。そのため、本社に資金的なリスクの少ないフランチャイズ展開をしていることはうなずける。さらにスターバックスはコーヒーの香りを楽しんでもらうため店舗内は禁煙であるが、ドトールコーヒーは分煙していない(筆者の知る限り)。この点も両社の経営方針に沿っているように思える。

ただ一時にくらべ、低価格コーヒー(品質は十分であるが)には、新鮮さが失われてしまっている現在、なんらかの対策(商品開発、オープンカフェ等の空間提供)がなければ、ドトールコーヒーは同じようなコーヒーを提供する企業、或いは独自のコーヒーを提供するスターバックスのような企業により苦戦を強いられるかもしれない。また本格的にスターバックスの経営理念、企業文化が顧客に受け入れられるようになると、フランチャイズ方式のドトールコーヒーは、それに匹敵するような顧客に支持される経営理念、企業文化を各店舗に浸透させるのは、直営方式に比較して困難であろう。特に企業文化は長い企業歴史により築かれるものであることに注意が必要である。

いずれにせよ、両者の今後の経営指標の行方は大変興味深い。来年3月の決算期における両社の状況については、続報として紹介したい。

(YOSHI)



写真: 渋谷駅前交差点、原宿にて


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