| ■記事■ |
| ■21世紀の企業像 −逆マーケティング時代− キーフレーズ:顧客が会社を選ぶ時代 マーケティングとは顧客ニーズを分析し、それに応える製品(商品/サービス)を提供することを支援するための活動である。具体的には、図1に示すようなプロセスでマーケティング活動が進められることが多い(個々のプロセスについては、書店でビジネス書を参照されたい)。 ![]() 図1 一般的なマーケティングプロセス ところで、従来のマーケティングは、「新規」顧客の開拓にウエイトを置いてきたが、90年代に入り、マーケティングに対する新しいトレンドが現れてきたことにお気づきであろう。それらの代表格は以下の2つのマーケティングアプローチである。 【1】顧客維持型マーケティング 従来のマーケティングが重視した新規顧客の開拓は、大変なエネルギーを必要とするため、既存顧客の維持にウエイトを置くマーケティング。顧客個人はもちろん、その家族を含めて継続的につき合うという考え方である。 メリット: (1)費用対効果が優れている。即ち少ないマーケティング費用で収益が見込める。 (2)顧客情報の入手・活用が容易。即ち不特定多数の顧客をターゲットとしていないため、顧客情報の入手、また得られた情報をマーケティング戦略に反映することが容易である。 デメリット(制限): (1)顧客がある会社の製品を使いたいと思う要素(差別化要素)が、もともとその製品に備わっていない場合、このマーケティングの効果は乏しい。例えば価格競争によってのみ、決まるような製品の場合。 【2】同時進行型マーケティング IT時代を迎え、顧客ニーズは新しいものを求めて、目まぐるしく変化している。ITを駆使することにより、顧客ニーズをリアルタイムで分析し、顧客ニーズに応えるという考え方である。コンビニのPOS(Point of Sales)システムが有名である。 メリット: (1)顧客対応のスピード化が可能になる。 デメリット(制限) (1)インフラ整備に投資が必要。 (2)収集したデータベースの活用方法にノウハウが必要。 これらマーケティングアプローチは、従来型のマーケティングを補完するものとして、業種によっては先駆的な企業でその効果が現れているようである。 さて今回のテーマは“逆マーケティング時代”である。この意味について説明したい。 キーフレーズとして、「顧客が会社を選ぶ時代」と題したが、これは当たり前と言えば当たり前である。ただ特に90年代以前は、経済性を追求した売り手の理論で、「買い手」は「売り手」が大量生産した限られた品種の中から、選ぶ(或いは買わざるを得ない)という状況にあったことは、「新顧客満足経営」で解説した通りである。 またこれまで多くの企業が、或いは飲食店などでもそうであるが、創業当時は顧客ニーズに敏感に反応し、絶えず工夫し、改良を加え努力してきた。しかしながら、ある程度経営が軌道に乗った場合、売り手の理論になってしまい、顧客ニーズの変化を真剣に追うことなく、初心を忘れることが多かったわけである。この場合も「顧客が会社を選ぶ」という大前提が忘れられている例である。つまり過去の成功にしがみつく傾向がどうしても現れるわけである。私流に言えば、『成功に失敗する』典型例である(世の中では「失敗は成功のもと」というが、ビジネスでは「成功は失敗のもと」になり得るケースが、余りにも多いわけである)。 ただここで強調したいことは、規制緩和の影響を受け、あらゆる業界で規制の垣根が撤廃され、国内競合他社はもとより、海外勢も加わり、完全に「買い手」の理論にシフトしていることである。さらにITの発展と共に、「買い手」はインターネットなどを利用することにより、全世界から必要なものを、調査、選択、調達することが、短時間の内に可能となっていることである。 従って、今後顧客が自分のニーズに合ったものを提供する会社が、世界のどこにあるのかについて、「逆」マーケティングする時代に入って行くと思われる。この「逆」マーケティング時に、顧客は製品そのものの良し悪しを評価するのはもちろんであるが、それと共に、製品を通して顧客に提供する夢、顧客・製品に対する姿勢、また会社の将来ヴィジョン等が、顧客をひきつけることは間違いないであろう。 従来のマーケティング戦略の一部である、プロモーション戦略では「口コミ」が極めて大切な場合がある。レストラン経営などはその典型的な例である。口コミに加え、今後はITの発達と共に、口コミが瞬時にネット上を走り(ネットコミ:net communication)、情報が世界に伝播する時代に入っている。そのため、企業としても顧客がもつ「製品イメージ」、「企業イメージ」の向上に真剣に取組まねばならないであろう。また逆に、この「逆」マーケティング時代の意味をよく把握する企業は成功を収めるに違いない。 まとめると顧客が会社を選ぶ、「逆」マーケティングの時代を迎え、企業は次の点について、絶えず明確な姿勢を示し、顧客をひき付けることに挑戦しつづけなければ、継続的成功、継続的発展は望めないであろう。 (1)製品を通して顧客に何を提供したいのか? たとえばジュースはのどの渇きを癒すものであることは誰でも認識している。その機能面と共に、例えば、このジュースを飲むことにより、気持ちがやすらぎ、リフレッシュしてまた仕事に取組めるような製品イメージを目指すべきである。 ホテルも宿泊等のために利用する施設であることは誰でも認識している。やはりその機能面と共に、このホテルに来れば、我が家のような接待を受けるとか、きびきびした対応にこちらまで姿勢が正され、すがすがしくなるといったイメージが大切なのである。 即ちその製品を利用することにより、顧客にどのような「プラスの影響」を与えるのかを、単に機能面(HOW)だけではなく、より本質的な(WHY)側面に、細心の(また最新の)意識と関心を払い、顧客に伝えるべきである。 (2)会社全体として顧客に、また社会に何を提供したいのか? 従来から企業イメージを宣伝するコマーシャルは多く見られる。企業のホームページには、経営理念や、ミッションの類が必ず記されている。今後は@で説明した製品に対する姿勢と同様に、「会社全体」として顧客、社会にどのような「プラスの影響」を与 えるのかを、より本質的な(WHY)側面を重視して、顧客に伝える必要がある。 以上のことは従来のマーケティング戦略の、一部分としての「プロモーション戦略」の枠を超えて、より高次の次元で取組むべき内容であることに留意する必要がある。即ちプロモーション戦略は、ある製品の売上を伸ばすために、如何なる宣伝を行うかについての戦略であることに対して、上述の取組みは、会社の経営理念、あるいは企業文化といった、本質を含めて問われているのである。 「逆」マーケティング時代を迎え、例えば図2に示す、製品WHY-HOWポジショニングマップがわかりやすいであろう。図2では、WHY軸は、製品が顧客に提供する「本質的満足度」を表し、HOW軸は、製品の機能面を表す。 ![]() 例えば、製品Aは機能的にはさほどハイテクを駆使したものではないが、顧客に「ゆとり」、「やすらぎ」、「感動」といった本質的満足を提供する製品(商品/サービス)である。また製品Bは機能面では優れているが、アフターサービスが悪いため、顧客にいらだちを感じさせてしまうといった製品である。さらに製品Cは、機能面では最高レベルであるが、顧客の内的成長にマイナスとなるような製品である。製品Cの具体例については言及しないが、世の中には必ずしも人を幸せに導く製品ばかりではなく、人を破滅に至らせるような製品があるように思える。 図2では製品について説明したが、企業自体がWHY-HOWポジショニングのどの位置にあり、企業活動を推進しているのかについても顧客、社会に説明することにより、「企業イメージ」が明確化する。なおWHY軸はさらに分解すると、知(知性、知識)、情(愛情、美)、意(創造性、行動力)の観点から、顧客に「本質的満足度」を提供する。 このような「製品イメージ」、「企業イメージ」を、「逆」マーケティング時代に確立するために、ITは良きパートナーになるであろう。しかしすでに述べた通り、単なる「プロモーション戦略」として、ITを活用した表層的なイメージアップが通用する時代は過ぎ去ろうとしている。経営理念、企業文化といったより高次元、本質的な観点から、企業は変革を迫られている。この変革を進める方法論として、「新リエンジニアリング」と題して、近々まとめてみたい。 (YOSHI) |
||
|
|
||